ミュリエルの誕生日

megumimaginery2006-01-16

ミュリエルの誕生パーティがシティホスピタルのヘイワードホスピスで開かれた。


広大な病院の敷地内で迷い、面会時間が過ぎてしまうのではないかとやきもきしたり、病室は無菌室なのではないか、とかアルコール消毒にマスクが必要だったら、絵の具だらけの手ではまずいんじゃないか、とか妄想していたら、何の、ホスピスのホール借り切った盛大なパーティに40人は下らない人々が詰めかけていたのであった。


遅刻したうえに最初の失敗をやらかす。挨拶に近付いてきた女性に「ミュリエル〜」と飛び付いたら、「私はジーンよ、ミュリエルはあちら」と言われた。何とミュリエルには双子の姉妹が居て、今日は二人の60歳の誕生日を祝うパーティだったのだ。


ミュリエルは思いの他元気そうだった。40キロ近く痩せた、と聞いていたので覚悟して行ったが、化学療法を打ち切ったので髪の毛が生え揃い、もともと大柄なひとなので抱き合って挨拶してもがっしりしていて腕の力も強い。肌の色艶も良い。まぎれもない生命のエネルギーが伝わってきた。


それにしても双子のジーンは、もう恐いくらい以前のミュリエルにそっくりであった。二人は看護婦として同じ病院に勤めており、医師が違うフロアにいる片方に指示を出したのに、もう一人と勘違いをして指示がとおっていないと騒いだりしていたそうだ。


同じ日に生まれ、同じ職場を勤め上げた二人。ミュリエルの病気を最も悲んでいるひとは双子のジーンに他ならない。人生と運命の大部分を共有して来たその一方にだけ、病気が降り掛かった。だがその苦しみとそれを乗り越えて共に誕生日を迎える喜びは共有しているのである。


ミュリエルは週末に一晩帰宅して様子を見て、ジーンと暮らす自宅に戻る予定である。自宅はアッテンボローの駅の近く、我々のレースのクラスをやっているクライストチャーチから歩ける距離にある。