プラハ - モルダウという言葉を一度も聞かなかった

megumimaginery2006-01-10

プラハと言えば、スメタナの「モルダウ」を思い出す人が多いだろう。モルダウとは、市内を流れるヴルタヴァ川のドイツ語読みである。この川はチェコ南部に端を発しチェコを北上し、ドレスデンの近くでドイツに入ってエルベ川になる。


モルダウ」の情緒と哀愁に満ちたメロディとは裏腹に、私のこの川への印象は、何か牧歌的なものであった。氷点下の気温の中で観光ボートは御機嫌で手を振るアメリカ人を満載して往来しているし、河童も棲んでいるらしい。ヴルタヴァ川と雪の積もった背後の丘の光景は、金沢の浅野川卯辰山を想い起こさせる。


モルダウ」は御当地でも大人気で、コンサートの演目にはほぼ必ず入っている。しかし、プログラムには「わが故郷より - ヴルタヴァ(モルダウ)」などと書かれており、インフォメーションなどでモルダウを聴きたいんですが、とはちょっと聴けない雰囲気であった。


プラハには長年ドイツ系の住民が暮らしていて、教育もドイツ語で行なっていた。フランツ・カフカなどがその典型で、彼の著作が世界的に有名になったのも、ドイツ語で著作を行なったからだとされる。


ドイツ系住民は中世期の植民に始まりハプスブルク家の支配、果てはナチス・ドイツに至るまでチェコ人にとっては支配的存在であった。共産主義の時代になると殆どのドイツ系住民がドイツに帰化してしまったらしい。


現在のプラハでは英語が比較的通用する。ツーリストインフォメーションのスタッフの青年が、ドイツ人旅行者を相手に最初はたどたどしいドイツ語で対応していたが、音をあげて英語に切り換えているのを目撃した。中高年以上の世代は教育を受けているのでドイツ語が通じるらしい。このドイツとチェコの言葉の関係、日本と近隣アジア諸国とのそれと共通した部分があるようだ。